従業員満足度を上げる取り組み|5問のアンケートから始める中小企業の進め方

「社員が今の会社に満足しているのか、正直なところ分からない」。従業員5〜50名の会社の経営者から、よく聞く言葉です。
お米の福利厚生「コメフク」を運営する、丸恵商会の花村です。福利厚生の相談をいただく中で、その手前にある「満足度をどう把握するか」で止まっている会社が多いと感じています。
この記事では、調査ツールを導入しなくても自社で満足度を把握する方法と、取り組みを効きやすい順に並べる考え方を整理します。
従業員満足度とは、何に対する満足なのか
従業員満足度(ES)は、社員が自分の職場に対して感じている納得感の総和です。ひとつの数字で語られがちですが、中身は分けて考えたほうが手が打てます。
| 満足度の要素 | 社員が見ているもの |
|---|---|
| 待遇 | 給与、賞与、手当、福利厚生 |
| 労働条件 | 労働時間、休日、休暇の取りやすさ |
| 人間関係 | 上司との関係、職場の雰囲気 |
| 仕事の内容 | やりがい、裁量、成長できるか |
| 会社の将来 | この会社が続くのか、自分の先が見えるか |
経営者が「満足度を上げたい」と考えるとき、手を出しやすいのは1番目の待遇です。ただ、社員が不満を感じている場所が別にあると、待遇を改善しても数字は動きません。
辞めた人の理由から、満足度の中身を見る
社員の本音に近いデータとして使えるのが、転職した人が前職を辞めた理由です。厚生労働省の令和6年雇用動向調査に集計があります。
| 辞めた理由 | 男性 | 女性 |
|---|---|---|
| その他の個人的理由 | 20.2% | 24.3% |
| 定年・契約期間の満了 | 14.1% | — |
| 給料等収入が少なかった | 10.1% | — |
| 労働時間、休日等の労働条件が悪かった | 8.6% | 12.8% |
| 職場の人間関係が好ましくなかった | 9.0% | 11.7% |
| 会社の将来が不安だった | 7.4% | — |
同調査では、個人的理由と出向等を除くと、男性は「定年・契約期間の満了」が最も多く、次に「給料等収入が少なかった」。女性は「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」が最も多く、次に「職場の人間関係が好ましくなかった」となっています。
前年からの上昇幅が最も大きかったのは、男性が「会社の将来が不安だった」で2.2ポイント、女性が「労働時間、休日等の労働条件が悪かった」で1.7ポイントでした。
つまり、待遇だけの話ではありません。労働条件・人間関係・会社の将来という、お金以外の要素が同じ重みで並びます。離職そのものへの対策は離職防止の記事で詳しく整理しています。
制度を増やしても満足度が上がらない3つの理由
福利厚生を足したのに反応がない、という相談をよくいただきます。原因はだいたい次の3つです。

1. 制度が知られていない
入社時に一度説明しただけの制度は、覚えられていません。社員にとっては「あるかどうか分からないもの」は、ないものと同じです。
朝礼、社内チャット、給与明細に一行添える。使われていない制度は、まず伝え方を疑ってください。
2. 使える人が限られている
子どものいる社員だけ、正社員だけ、内勤だけ。対象が限られる制度は、使えない側に不満を生みます。制度を足したのに満足度が下がる、という逆の結果もあり得ます。
3. 不満の原因が別にある
労働時間や人間関係に不満がある状態で待遇を足しても、そちらの不満は消えません。先に現状を知る手順が必要になります。
数字を取る前に見える、満足度のサイン
アンケートを待たなくても、日常の中に手がかりがあります。5〜50名の会社なら、経営者の目が届く範囲です。
| 日常のサイン | 疑うべきこと |
|---|---|
| 有給の取得がいつも同じ人だけ | 休みを取りにくい空気がある |
| 会議で若手が発言しなくなった | 言っても変わらないと思われている |
| 制度の話を振っても反応がない | 制度が知られていない、または自分には関係ないと思われている |
| 退職の相談が、引き継ぎ直前に来る | 相談できる相手が社内にいない |
最後の1つは特に見落とされます。辞める決断の前に相談が来る会社と、決めた後に報告が来る会社では、打てる手の数がまったく違います。
自社でつくる、5問の満足度アンケート
専用ツールは、5〜50名の会社には重すぎます。紙でもチャットのアンケート機能でも十分に把握できます。
設計のルールは3つ。無記名にする、選択式にする、5問以内に収める。答えるのに3分以上かかるアンケートは、本音が出る前に面倒になります。
設問の例
| 設問 | 選択肢 | 見えること |
|---|---|---|
| 今の仕事に満足していますか | 5段階 | 全体の水準(次回との比較用) |
| いちばん改善してほしいことは何ですか | 給与/労働時間・休日/人間関係/仕事の内容/設備・環境 | どこに手を打つべきか |
| 休みは取りやすいですか | 5段階 | 労働条件の実感 |
| 困ったことを相談できる相手が社内にいますか | いる/いない/分からない | 人間関係と孤立のサイン |
| 会社の福利厚生を、いくつ知っていますか | 全部/いくつか/ほとんど知らない | 伝わっているかどうか |
5問目が効きます。制度を増やす前に、今ある制度が知られているかが分かります。「ほとんど知らない」が多ければ、新しい制度より先に周知の問題です。
聞くときに守ること
- 無記名にする。誰が書いたかを詮索しないと先に伝える
- 業務時間内に答えられるようにする。持ち帰らせると回収率が落ちます
- 回収は封筒か、集計者が1人に限られる形にする
- 結果の使い道を先に伝える。「制度を見直すために聞きます」と言い切る
集計したら、結果を社員に返してください。聞いておいて何も言わないのが、いちばん信頼を損ねます。「この項目が低かったので、まずここから手をつけます」と伝えるだけで十分です。
取り組みを、効きやすい順に並べる
満足度への施策は、性質が2つに分かれます。「不満を減らすもの」と「満足を生むもの」です。混ぜて考えると優先順位を間違えます。
| 性質 | 施策の例 | 特徴 |
|---|---|---|
| 不満を減らす | 休みの取りやすさ、労働時間、待遇、職場環境の整備 | なくすと強い不満になる。整えても「当たり前」と受け取られる |
| 満足を生む | 仕事の裁量、成長の機会、感謝を伝える場、家族への配慮 | 整えると前向きな評価につながる |
先に手をつけるのは「不満を減らす」側です。休みが取れない会社で、やりがいの話をしても届きません。
そのうえで、費用をかけずに始められるものから並べていきます。何が喜ばれるかは従業員に人気の福利厚生ランキング、制度のアイデアはユニークな福利厚生のアイデア20選にまとめています。
予算の考え方は福利厚生費はいくらまで?を、健康面からの切り口は健康経営の取り組みをご覧ください。
食の支援が、満足度に効きやすい理由
厚生労働省の令和3年就労条件総合調査では、法定外福利費は常用労働者1人1か月あたり平均4,882円でした。限られた予算の中で何を選ぶかという話になります。
ビズヒッツが2021年10月に働く男女501人へ行った調査では、あったら嬉しい福利厚生の上位に家賃補助・特別休暇・食事補助が並びました。生活に直接効くものが選ばれています。
食の支援は、先に挙げた「上がらない3つの理由」を避けやすい性質を持っています。
- 毎月届くので、制度を忘れられない。周知の問題が起きにくい
- 年代・家族構成・雇用形態を問わず、全員が同じように使える
- 自宅に届く形なら、現場勤務の社員やご家族にも届く
私たちのコメフク(お米の福利厚生)も、この考え方で設計しました。社員がLINEから注文し、会社が費用の一部を補助する。会社側の取りまとめ作業はなく、導入費は0円です。
仕組みと費用の考え方はお米の福利厚生とは?で説明しています。
続けるための4ステップ
一度の取り組みで満足度が上がることはありません。回す形にしておきます。
設問を変えると前回と比較できません。同じ5問を続けることに価値があります
全部に手をつけない。1年で1つ改善できれば十分です
何を、いつから、誰が対象か。伝えていない改善は、評価されません
数字が動いたかを見る。動いていなければ、打ち手か伝え方のどちらかを変えます
伝えるときの言い方
同じ改善でも、伝え方で受け取られ方が変わります。
| 伝わりにくい言い方 | 伝わる言い方 |
|---|---|
| 福利厚生を充実させました | 10月から、毎月お米10kgを会社補助で自宅にお届けします |
| 働きやすい環境を目指します | 有給は前日までの申請でよいことにします。理由は書かなくて構いません |
| 皆さんの声を反映しました | アンケートで休みの取りにくさが一番低かったので、ここから直します |
左側は会社の姿勢の表明で、右側は社員の生活が変わる情報です。社員が知りたいのは後者です。
この4つを回している会社は、社員から見て「話を聞いてくれる会社」になります。制度の中身より、この姿勢のほうが満足度に効く場面は多いと感じています。
従業員満足度についてよくある質問
まとめ:測ってから、1つだけ手をつける
この記事の要点を整理します。
- 満足度は待遇・労働条件・人間関係・仕事の内容・会社の将来に分けて考える
- 雇用動向調査では、労働条件・人間関係・会社の将来といったお金以外の理由が上位に並ぶ
- 制度が効かない原因は、知られていない・使える人が限られる・不満の原因が別にあるの3つ
- 測定は無記名・選択式・5問以内で足りる。同じ設問を毎年続ける
- 先に「不満を減らす」側から着手し、1年で1つ改善する
満足度は、制度の数では決まりません。聞いて、返して、1つ直す。この繰り返しが形になります。
食の福利厚生についてのご相談は、いつでもお受けしています。
