健康経営とは?中小企業が無理なく始める取り組みと、優良法人認定の要件

「健康経営」という言葉を、取引先や銀行との会話で耳にする機会が増えていないでしょうか。
大企業の取り組みだと思われがちですが、実は認定を受けている法人の8割以上は中小規模の法人です。専任の担当者がいなくても、始められる仕組みになっています。
この記事では、健康経営とは何かを公的な定義から確認し、中小企業が無理なく始められる取り組みと、認定制度の要件を整理します。私たちは岐阜県羽島市の米農家「丸恵商会」で、企業向けにお米の福利厚生を提供しています。「食」がこの制度の中でどう位置づけられているかも、正直に書きます。
健康経営とは何か
まず言葉の定義から押さえます。
経済産業省は健康経営を、「従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、健康の保持・増進につながる取組を戦略的に実践する」ことと説明しています。
ポイントは「経営的な視点で」「戦略的に」という2つの言葉です。社員の健康を福利厚生の一部として扱うのではなく、会社の業績や継続に関わる投資として位置づける。この考え方の転換が、健康経営の中身です。
健康診断を実施しているだけでは、健康経営とは呼びません。診断の結果をもとに、会社として何をするかを決めて実行し、翌年に見直す。この一連の流れが求められます。
なぜ中小企業で注目されているのか
健康経営の認定制度「健康経営優良法人」は、大規模法人部門と中小規模法人部門に分かれています。
経済産業省の発表によれば、2026年3月に認定された法人は、大規模法人部門が3,765法人、中小規模法人部門が23,085法人。認定法人の8割以上が中小規模の法人です。
中小企業がここまで取り組む理由は、大きく3つあります。
| 理由 | 背景 |
|---|---|
| 採用で差がつく | 求人票や会社案内に「健康経営優良法人」と書ける。応募者が会社を比べる材料になる |
| 人が減っても回る会社にする | 体調不良による欠勤や離職は、少人数の会社ほど影響が大きい |
| 取引先・金融機関からの見られ方 | 認定の有無を確認する取引先や、融資条件で優遇する金融機関がある |
特に1つ目と2つ目は、人手不足と離職防止の記事で扱った課題に直結しています。健康経営は、それらへの打ち手の一つとして機能します。
健康経営優良法人(中小規模法人部門)の認定要件
認定を目指す場合の要件を整理します。ここが分かると、「何から手をつければいいか」が見えてきます。
以下は、健康経営優良法人2026(中小規模法人部門)認定要件の構造を、経営者向けに読み替えたものです。
必ず満たす項目
- 健康宣言: 健康経営に取り組むことを社内外に発信し、経営者自身が健康診断を受ける
- 健康づくり担当者の設置: 専任である必要はなく、兼任で構わない
- 健診データの提供: 求めに応じて、40歳以上の従業員の健診データを提供できる状態にする
- 受動喫煙対策: 職場での受動喫煙を防ぐ取り組み
- 評価・改善: 取り組みを振り返り、翌年に活かす
- 法令遵守: 定期健診の実施、労働関係法令の違反がないことなど(自主申告)
選択して満たす項目
必須項目に加えて、次の3つの区分からそれぞれ一定数を選んで実施します。
| 区分 | 項目の例 | 中小規模法人部門 | 小規模法人特例 |
|---|---|---|---|
| 健康課題の把握 | 定期健診受診率(実質100%)、受診勧奨、50人未満の事業場でのストレスチェック | 3項目中2項目以上 | 3項目中2項目以上 |
| 土台づくり | 教育機会の設定、適切な働き方、育児・介護との両立、コミュニケーション促進、女性・高年齢者への配慮など | 7項目中2項目以上 | 7項目中2項目以上 |
| 具体的な健康づくり | 保健指導、食生活の改善、運動機会の増進、長時間労働者への対応、心の健康、感染症予防、喫煙率低下 | 7項目中4項目以上 | 7項目中2項目以上 |
※認定要件の構造を要約したものです。申請にあたっては、必ず最新の公式資料をご確認ください。
注目したいのは、3つ目の区分に「食生活の改善に向けた取り組み」が独立した項目として置かれていることです。運動や禁煙と並んで、食が健康経営の正式な評価項目になっています。
中小企業が無理なく始められる取り組み
要件を見て「うちには無理だ」と感じた方もいるかもしれません。ただ、費用をかけずに始められる項目は少なくありません。着手しやすい順に並べます。

1. 健康宣言を出す(費用0円)
必須項目でありながら、いちばん簡単な一歩です。「当社は社員の健康を大切にし、次の取り組みを行います」と書いて、社内に掲示し、ホームページに載せる。それだけで要件を満たします。
多くの都道府県や協会けんぽが「健康宣言」の登録制度を用意しています。お住まいの地域の協会けんぽに問い合わせると、ひな形をもらえることがあります。
2. 健診の受診率を100%にする
定期健診は法律上の義務ですが、「受けていない人が何人かいる」という会社は珍しくありません。未受診者に声をかけ、受診日を業務時間内に確保する。これだけで「受診率」と「受診勧奨」の2項目に手が届きます。
3. 話す場をつくる
「コミュニケーションの促進に向けた取り組み」は、大がかりな制度でなくて構いません。月に一度の全体朝礼、部署をまたいだ昼食会、経営者との15分面談。すでにやっていることが該当する場合もあります。
4. 食生活の改善に取り組む
「具体的な健康づくり」の区分では、中小規模法人部門で7項目中4項目以上が必要です。運動・禁煙・メンタルと並べたとき、食は取り組みの形を作りやすい項目です。
何が「食生活の改善に向けた取り組み」に当たるかは、申請時の要件と審査によります。一般に、社員が食事の内容を改善するきっかけになる継続的な仕組みが対象とされていますが、個別の制度が該当するかどうかは、申請前に公式の手引きと照らして確認してください。
5. 運動の機会をつくる
ラジオ体操、階段利用の呼びかけ、歩数を競うイベント。費用がかからないものから始められます。続けることが評価されるので、派手さより継続性を優先してください。
認定を目指す場合の、1年の流れ
認定は毎年の申請制です。取り組みを始めてから認定までの流れを、時期ごとに整理します。
| 時期 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 春 | 健康宣言を出す。健診の日程を決め、未受診者をなくす | 宣言は社内掲示とホームページ掲載で足りる |
| 夏 | 選択項目のうち、費用のかからないものから2〜3つ始める | 「すでにやっていること」を項目に当てはめる |
| 秋 | 申請受付が始まる。取り組みの記録をそろえて申請する | 写真・日付・参加人数の記録があると書きやすい |
| 冬〜翌春 | 認定結果の発表。取り組みを振り返り、翌年の計画を立てる | 「評価・改善」は必須項目。ここを飛ばさない |
※申請時期や手続きは年度によって変わります。経済産業省の「ACTION!健康経営」ポータルサイトで最新の日程をご確認ください。
最初の年は、認定を取ることより「記録を残す習慣」をつくることに重きを置いてください。何をいつ誰がやったかが残っていれば、翌年の申請は驚くほど楽になります。
担当者を誰にするか
「健康づくり担当者の設置」は必須項目ですが、専任である必要はありません。総務や経理の方が兼任している会社がほとんどです。
向いているのは、社員全員と日常的に接点がある人です。健診の日程調整、未受診者への声かけ、イベントの案内。どれも「顔が見える関係」があると進めやすくなります。
経営者が自ら担当する形も、小さな会社では機能します。ただし、その場合は「経営者が言うから仕方なく」にならないよう、取り組みの理由を社員に説明する場を設けてください。
健康経営でよくある3つの誤解
取り組みを始める前に、つまずきやすい考え方を整理しておきます。
誤解1:大企業のための制度
認定法人の8割以上が中小規模法人です。「小規模法人特例」も設けられており、従業員数の少ない会社ほど要件が緩和されています。
誤解2:お金がかかる
健康宣言、受診勧奨、話す場づくり、体操。ここまでは費用がほぼかかりません。費用が必要になるのは、外部サービスを入れる段階からで、そこは会社の判断で選べます。
誤解3:認定を取ることが目的
認定はあくまで結果です。目的は、社員が元気に働き続けられる会社にすること。認定要件に「評価・改善」が必須で入っているのは、取って終わりにさせないためだと理解しています。
認定を目指すかどうかにかかわらず、要件の一覧は「何をすれば社員の健康に効くか」のチェックリストとして使えます。まずそこから眺めてみてください。
私たちがお米という形を選んだ理由
私たちが企業向けにお米の福利厚生を提供しているのは、「食」が健康経営の正式な評価項目になっているからではありません。順番は逆で、社員の毎日の食卓に届くものを考えた結果がお米でした。
お米は毎日の食事の土台です。外食や中食が続きがちな一人暮らしの社員にも、家族のいる社員にも、同じように届きます。特別な健康食品ではなく、ふだんの食事を整える方向に働くものだと考えています。
- お米を食べない社員はほとんどいない。年代や家族構成を選ばない
- 社員がLINEから直接注文するため、会社の取りまとめ作業がない
- 導入費は0円。注文がなければ月額基本料もかからない
- ご自宅への配送を選べるので、現場やテレワークの社員にも届く
健康経営の取り組みとして位置づけるかどうかは、会社ごとの判断になります。認定要件の項目に該当するかは、申請時に公式の手引きで確認してください。私たちからは「該当します」とは申し上げません。
仕組みと費用の考え方は、お米の福利厚生とは?で説明しています。
健康経営に関するよくある質問
経営者の方から寄せられることの多い質問をまとめます。
まとめ:健康経営は、中小企業のための制度になっている
この記事の要点を整理します。
- 健康経営とは、社員の健康を経営の投資として捉え、戦略的に実践すること
- 2026年の認定法人は中小規模法人部門が23,085法人。認定の8割以上が中小企業
- 健康宣言・受診率100%・話す場づくりは、費用をかけずに始められる
- 「食生活の改善」は運動・禁煙と並ぶ正式な評価項目
- 認定は結果であって目的ではない。要件一覧をチェックリストとして使う
まず健康宣言を1枚書いてみてください。そこから、会社に合った取り組みが見えてきます。
お米の福利厚生についてのご相談は、いつでもお受けしています。
