ハツシモとは?岐阜だけで育つ「幻の米」の特徴・味・合う料理を米農家が解説

炊きたてのごはんの写真に「ハツシモとは? 岐阜だけの幻の米」の見出しを重ねたアイキャッチ

「ハツシモ」というお米の名前を、岐阜県の外で聞くことはほとんどありません。

県内では一番多く作られている品種なのに、県外ではまず売っていない。だから「幻の米」と呼ばれます。一方で、「食べてみたら思っていたのと違った」という声があるのも事実です。

私たちは岐阜県羽島市でハツシモを育てている米農家「丸恵商会」です。作っている側から、このお米の来歴、味の特徴、合う料理、そして「まずい」と言われることがある理由まで、正直にまとめました。

目次

ハツシモとは、どんなお米か

まず、品種としての基本を押さえます。

岐阜県の説明によれば、ハツシモは1950年に岐阜県の奨励品種となり、美濃平野を中心に広く栽培されてきました。岐阜県内では作付面積が一番多い品種ですが、他の県ではほとんど生産されていません。県は「岐阜県のオンリーワン品種」と位置づけています。

品種の系譜は、農林水産省の品種特性資料に「東山24号×近畿15号(農林8号)」と記されています。粒の形は「長形で大粒」、千粒重(お米1,000粒の重さ)は25.2gと記載があります。

70年以上、岐阜の土と気候に合わせて作り続けられてきたお米です。県外で見かけないのは人気がないからではなく、岐阜の外ではあまり作られていないからです。

なぜ岐阜で作られ続けてきたのか

岐阜県は「気候や土壌に適していた」ことを、美濃平野で広く栽培されてきた理由として挙げています。1950年の奨励品種指定から70年以上、この土地で選ばれ続けてきたという事実そのものが、相性の証拠だと考えています。

もう一つ、米農家の立場から見て大きいのは収穫時期です。ハツシモは晩生で、早い品種より1か月ほど遅く収穫を迎えます。早生・中生の品種と組み合わせれば稲刈りの時期が分散し、機械と人手を無理なく回せます。岐阜の農家にとって、この「遅さ」は扱いやすさでもあります。

裏を返せば、この収穫の遅さが他の地域では合わなかった可能性もあります。県外で広まらなかった理由については、はっきりした資料が見当たらないため、ここでは断定を避けます。

名前の由来と、収穫の時期

ハツシモは漢字で書けば「初霜」。名前の通り、収穫の時期に由来があります。

岐阜県によると、稲刈りの開始が、霜の降り始める頃だったことからこの名前がつきました。全国の品種の中でも収穫が遅い「晩生(おくて)」の品種で、近年は10月中旬が収穫のピークです。

9月に新米が並び始める産地が多い中で、ハツシモの新米は10月下旬から11月にかけて出回ります。「岐阜の新米はまだか」と感じたら、それはこの品種の性格です。

新米の時期や、新米を炊くときの水加減については、新米の水加減は少なめが正解?で詳しく説明しています。

ハツシモの味と食感の特徴

岐阜県の説明では、食味は「あっさりとし、大粒で噛みごたえがあり、寿司米としても好評」とされています。私たちが日々炊いて食べている実感も、この表現に近いものです。

ハツシモの3つの特徴(大粒で噛みごたえ・粘りは控えめ・冷めてもおいしい)を示した図
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項目ハツシモの特徴
粒の大きさ大粒で長め。炊き上がりに一粒一粒がはっきり立つ
食感少し硬めで、しっかりした弾力。噛むほどに味が出る
味あっさりとして、甘みとコシのバランスがよい
粘り控えめ。べたつきにくい
冷めたとき粒立ちが残り、味が落ちにくい

いちばんの個性は、粘りが控えめで粒が立つことです。もちもちとした食感を売りにする品種が多い中で、ハツシモは反対の方向にあります。

私たち丸恵商会のお米紹介ページでも触れていますが、吸水性が控えめなためべたつきにくく、梅雨を過ぎても食味の落ち方が緩やかです。年間を通して風味が安定しやすいお米だと考えています。

他の品種と比べると

よく知られた品種と並べると、ハツシモの位置がつかみやすくなります。一般的に言われる傾向を整理したものです。

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品種粘り食感の傾向向く食べ方
ハツシモ控えめ大粒・粒立ち・噛みごたえ寿司、丼、カレー、弁当
コシヒカリ強いもちもち、甘みがはっきり白ごはん、おにぎり
ミルキークイーンとても強いやわらかく、冷めても粘る白ごはん、おにぎり
ササニシキ控えめあっさり、さらっとした口当たり寿司、和食全般

※一般的な傾向です。同じ品種でも産地・年・炊き方で印象は変わります。

ハツシモに近いのはササニシキです。どちらも粘りが控えめで、寿司に向くとされています。ササニシキが「さらっと」なら、ハツシモは「しっかり」。粒の存在感が、両者の違いです。

「ハツシモはまずい」と言われることがある理由

検索すると「ハツシモ まずい」という言葉が出てきます。作っている立場として避けたい話題ですが、理由ははっきりしているので、正直に書きます。

理由1:「もちもち・甘い」を期待して食べている

いま人気の品種の多くは、粘りが強く、甘みがはっきりしています。その基準でハツシモを食べると、「硬い」「あっさりしすぎ」と感じることがあります。

これは品質の問題ではなく、方向性の違いです。ハツシモは粒立ちと噛みごたえを楽しむお米で、もちもち系とは目指しているところが違います。

理由2:炊き方が合っていない

ハツシモは吸水性が控えめな品種です。浸水時間が短いまま炊くと、芯が残ったように感じることがあります。

浸水を30分以上しっかり取るだけで、印象は変わります。水加減は炊飯器の目盛り通りで構いません。減らしすぎると、持ち味の粒立ちが「硬さ」として出てしまいます。

理由3:保存で味が落ちている

どの品種にも共通することですが、精米から時間が経ったお米は風味が落ちます。ハツシモは食味が安定しやすい品種ですが、袋のまま暖かい場所に置けば、やはり劣化します。

保存の基本はお米の正しい保存方法にまとめています。

向いている人、向いていない人

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向いている向いていない
粒がしっかりしたごはんが好きもちもち、やわらかいごはんが好き
丼もの・寿司・カレーをよく作る白ごはんの甘みを最優先する
お弁当や冷めたごはんを食べる機会が多い炊きたてだけを食べる
毎日食べても飽きないお米を探している個性の強い甘みを楽しみたい

「まずい」ではなく「好みに合うかどうか」の話です。粒立ち派の方には、代わりのきかないお米になります。

ハツシモが合う料理

粘りが控えめで粒が立つ性格は、料理によっては大きな長所になります。

  • 寿司・ちらし寿司: 岐阜県も「寿司米として好評」と説明する通り。酢を合わせても粒がつぶれません
  • 丼もの: つゆがかかっても、ごはんがべちゃっとなりにくい
  • カレー・ハヤシ: ルーと混ざっても粒感が残る
  • チャーハン・ピラフ: パラっと仕上がる。冷やごはんからでも作りやすい
  • お弁当・おにぎり: 冷めても粒立ちと味が残る

逆に、卵かけごはんのようにごはんそのものの甘みと粘りを楽しむ食べ方では、もちもち系のほうが好みに合う方もいます。

ハツシモをおいしく炊くコツ

特別なことは要りません。3つだけ意識してください。

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ポイントやること理由
浸水30分以上。冬は45分〜1時間吸水性が控えめなので、水を吸わせる時間を長めに取る
水加減炊飯器の目盛り通り減らすと粒立ちが硬さに変わる。まずは基準で炊く
ほぐし炊けたらすぐ、底から返す余分な蒸気を逃がし、粒立ちを保つ

柔らかめが好きな方は、水を3%ほど増やしてください。2合なら小さじ2杯程度です。

どこで買えるか、値段の目安

他県ではほとんど生産されていないため、県外のスーパーで見かけることはまれです。手に入れる方法は、大きく3つです。

  • 岐阜県内のスーパー・米穀店: 県内では一般的な品種として流通しています
  • 産地の直売所・農家からの直接購入: 精米したてを買える
  • 通販: 県外の方はこの方法が中心になります

値段は、販売経路・精米か玄米か・容量によって幅があります。私たちのお米の価格は、お米紹介ページに記載しています。

→ 丸恵商会のハツシモ(お米紹介)

精米と玄米、どちらを選ぶか

ハツシモは精米でも玄米でも流通しています。どちらを選ぶかで、味と扱いやすさが変わります。

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精米玄米
食べやすさそのまま炊ける浸水を長く取る。炊飯器の玄米モードが便利
日持ち精米から約1か月が目安精米より長く持つ。必要な分だけ精米できる
向いている人手間をかけずに食べたい方家庭用精米機がある方、まとめ買いする方

お米は精米した瞬間から風味が落ち始めます。まとめて買うなら玄米で保管し、食べる分だけ精米するのが、いちばん味を保てる方法です。

精米で買う場合は、精米年月日が新しいものを選び、1か月以内に食べきれる量にしてください。

私たちのハツシモについて

私たち丸恵商会は、岐阜県羽島市でハツシモを育てています。なるべく農薬を使わない栽培で、100%自社で作ったお米だけを扱っています。詳しくは米農家紹介をご覧ください。

出荷は、ご注文をいただいてから精米します。精米したてがいちばんおいしい状態なので、そこを届けたいからです。

また、企業向けにお米の福利厚生「コメフク」を提供しています。会社が一部を補助し、社員のみなさんがLINEで注文して、ご自宅にハツシモが届く仕組みです。「社員に岐阜のお米を食べてほしい」という経営者の方は、ご相談ください。

ハツシモに関するよくある質問

よく寄せられる質問をまとめます。

ハツシモとコシヒカリは、どちらがおいしいですか?

好みによります。コシヒカリは粘りと甘みが強く、ハツシモは粒立ちと噛みごたえが持ち味です。もちもち派ならコシヒカリ、粒立ち派・丼や寿司をよく作る方ならハツシモが合います。

ハツシモの新米はいつから買えますか?

晩生の品種で、収穫のピークは10月中旬です。新米が出回るのは10月下旬から11月にかけてが目安になります。9月にはまだ並んでいないことが多いです。

ハツシモは硬いと聞きましたが、本当ですか?

しっかりした弾力があり、粘りが控えめなので「硬め」と感じる方はいます。浸水を30分以上取り、水加減を目盛り通りにすると、粒立ちを残したまま食べやすく炊けます。

なぜ岐阜県でしか作られていないのですか?

1950年から岐阜県の奨励品種として、県内の土と気候に合わせて作り続けられてきた品種だからです。晩生で収穫が遅いなど、他の地域では扱いにくい面もあり、他県ではほとんど生産されていません。

玄米でも買えますか?

私たち丸恵商会では、精米と玄米のどちらも扱っています。玄米は精米に比べて日持ちしやすく、家庭用精米機をお持ちの方には向いています。

まとめ:粒立ちを楽しむ、岐阜だけのお米

この記事の要点を整理します。

  • 1950年から岐阜県の奨励品種。県内で作付面積1位、他県ではほとんど生産されない「幻の米」
  • 大粒であっさり、噛みごたえがある。粘りは控えめで、冷めても粒立ちが残る
  • 「まずい」は好みと炊き方の問題。浸水30分以上、水加減は目盛り通りで
  • 寿司・丼・カレー・お弁当に向く
  • 新米は10月下旬〜11月。名前の通り、初霜の頃のお米

もちもち系のお米に慣れた方ほど、最初は驚くかもしれません。ただ、粒立ちの良さを一度知ると、丼や寿司でこれ以外を使いたくなくなる。そういうお米です。

今年の新米が出たら、まず白いごはんでそのまま味わってみてください。

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