お米は低温倉庫で守る|収穫した後の「大切な仕事」を、丸恵商会の倉庫からお見せします

「低温倉庫」という言葉を、聞いたことはあるでしょうか。
お米は、収穫したら終わりではありません。収穫してから食卓に届くまでのあいだ、どこで、どう保管するか。これも、おいしさを守るための大切な仕事です。
お米の福利厚生「コメフク」を運営する、丸恵商会の花村です。岐阜県羽島市でハツシモを育てています。この記事では、収穫したお米を私たちがどのように保管しているのかを、倉庫の写真とあわせてお見せします。
お米は、収穫した後も生きている
お米は乾いた穀物なので、放っておいても変わらないように見えます。ところが、玄米は収穫後も呼吸を続けています。
農林水産省の資料によると、貯蔵中のお米では、酵素の働きによって、でんぷんの分解、たんぱく質の変性、脂質の分解などが進みます。これがいわゆる「古米化」で、風味やつやが落ちていく原因です。
進み方を左右するのが、温度です。同じ資料では、コシヒカリを常温(25℃・35℃)で貯蔵した場合は古米化の進行が確認された一方、低温(5℃・15℃)で貯蔵した場合は古米化の傾向がほとんど示されなかったと報告されています。
つまり、収穫直後の状態にどれだけ近いまま保てるかは、温度で決まります。田んぼでどれだけ丁寧に育てても、収穫後に暖かい場所へ置いておけば、味は静かに落ちていきます。
低温倉庫とは、どんな倉庫か
低温倉庫は、お米を保管するために温度と湿度を管理した倉庫です。
農林水産省の資料では、夏でも温度15℃以下、湿度70〜75%に調節された倉庫と説明されています。冷蔵庫ほど冷やすわけではなく、「冬の涼しい日」の状態を1年中保つ、というイメージが近いです。
同じ資料によれば、低温で貯蔵することで、害虫の発生や微生物の繁殖、品質の低下が抑えられます。貯蔵中に殺虫剤を使う必要もなくなる、と記されています。
| 常温で保管 | 低温倉庫で保管 | |
|---|---|---|
| 古米化(風味・つやの低下) | 夏を越すと進む | ほとんど進まない |
| 虫の発生 | 暖かい時期に起きやすい | 抑えられる |
| カビなど微生物 | 湿度が高いと繁殖しやすい | 抑えられる |
| 殺虫剤 | 必要になる場合がある | 不要 |
※農林水産省の資料をもとに整理した一般的な傾向です。
さらに低い温度で貯蔵する研究もある
同じ農林水産省の資料には、15℃よりさらに低い温度での貯蔵も紹介されています。マイナス1℃やマイナス5℃で60日間貯蔵する「氷温貯蔵」、雪の冷気を使う「雪室貯蔵」などです。雪室貯蔵では、鮮度がよく維持され、新米に近い食味を保っていたと報告されています。
ただし、温度を下げるほど設備と電気の負担は増えます。15℃以下という基準は、品質の保持と続けやすさの両方から見た現実的な線だと、私たちは受け止めています。
丸恵商会の低温倉庫を、写真でお見せします
丸恵商会でも、収穫したお米は低温倉庫で保管しています。温度を低く保つことでお米の品質を守り、必要な分だけ倉庫から出して、精米し、みなさんのもとへお届けしています。
ふだんお客様の目に触れない場所なので、写真でご紹介します。
収穫した玄米は、大きな袋のまま倉庫へ

写真に並んでいる大きな袋は「フレコンバッグ」といいます。収穫して乾燥させた玄米を、この袋のまま倉庫に入れます。壁一面の木の格子が印象的な倉庫です。
倉庫の温度を保つ、冷却の設備

倉庫の一角に、庫内を冷やすための設備があります。夏の暑い時期も、この設備が温度を低く保ち続けます。お米にとっては、外がどれだけ暑くても、倉庫の中は季節が止まっているような環境です。
出荷の分だけ、袋に詰めて運び出す

注文があった分だけを倉庫から出し、紙袋に詰めてパレットに積みます。写真の袋には「美濃ハツシモ」と印字されています。ここから精米の工程に進み、精米したてのお米をお届けする流れです。
必要な分だけ倉庫から出す。この一手間が、精米したときの鮮度に直結します。まとめて精米して置いておくのではなく、出荷のたびに倉庫から出して精米するのは、そのためです。
収穫から食卓まで、お米がたどる道
低温倉庫がどこに位置するのか、全体の流れで整理します。
| 工程 | 何をするか | 味との関係 |
|---|---|---|
| 収穫 | 10月中旬ごろ、稲刈り | 晩生のハツシモは全国でも遅い時期 |
| 乾燥 | もみを乾燥機で乾かし、水分を整える | 水分を整えることで保存が効き、炊き上がりも安定する |
| 低温倉庫で保管 | 玄米のまま、温度を低く保って保管 | 古米化・虫・カビを抑え、収穫時の状態を保つ |
| 精米 | 注文を受けてから、必要な分だけ精米 | 精米したてがいちばんおいしい |
| お届け | ご自宅または会社へ | 届いたら1か月を目安に食べきる |
乾燥と水分の話は新米の水加減の記事で、届いてからの保存はお米の正しい保存方法で詳しく書いています。倉庫での保管は、この2つのあいだをつなぐ工程です。
家庭の保存も、考え方は同じ
低温倉庫の話は、実は家庭での保存にそのまま当てはまります。
農林水産省は、お米につく虫は15℃以下で活動が鈍り、増殖できなくなると説明しています。倉庫の「15℃以下」と同じ基準です。
- 温度を低く: 家庭なら冷蔵庫の野菜室。倉庫の低温管理と同じ考え方
- 密閉する: 倉庫では袋のまま。家庭では密閉容器へ移す
- 必要な分だけ: 倉庫からは出荷分だけ出す。家庭では1か月で食べきれる量を買う
私たちが倉庫でやっていることを家庭の規模に縮めると、そのまま保存のコツになります。特別なことではなく、温度と湿気と時間に気をつける。それだけです。
夏を越すお米は、特に注意
倉庫で「夏でも15℃以下」と強調されるのは、夏がいちばん劣化の進む季節だからです。家庭でも同じで、室温が30℃近くになる時期に常温で置いたお米は、2〜3週間で風味が落ち始めます。
梅雨から9月にかけては、買う量を減らして冷蔵庫の野菜室に入れる。それだけで、同じお米の炊き上がりが変わります。
収穫した後の管理に、手を抜かない理由
田んぼで一生懸命つくったお米だからこそ、収穫した後の管理にも手を抜きません。これは私が、日々の仕事の中で大切にしていることです。
私たちが育てているハツシモは、あっさりとして大粒で、粒立ちのよさが持ち味のお米です。この持ち味は、収穫時の状態を保ててこそ食卓で出せます。倉庫の温度管理は、田んぼの仕事の続きだと考えています。
企業向けのお米の福利厚生「コメフク」でお届けするお米も、この倉庫から出て、注文を受けてから精米したものです。社員のみなさんのご自宅に届くお米が、どこでどう保管されていたのか。この記事が、その答えになれば幸いです。
お米の保管に関するよくある質問
よく寄せられる質問をまとめます。
まとめ:「美味しい」を食卓へ届けるために
この記事の要点を整理します。
- お米は収穫後も呼吸しており、暖かい場所では古米化が進む
- 低温倉庫は15℃以下・湿度70〜75%が目安。古米化・虫・カビを抑える
- 丸恵商会は収穫した玄米を低温倉庫で保管し、注文の分だけ出して精米している
- 家庭の保存も同じ考え方。温度を低く、密閉して、1か月で食べきる
お米づくりは、田んぼだけでは終わりません。収穫してから食卓に届くまでのあいだも、私たちの仕事です。
「美味しい」を食卓へ。そのために、見えないところにも手をかけています。
